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新・北斎展の「新」とは何ぞや? [美術館]

術後性の持病を持っているので、2ヶ月に一度定期的に通院しています。
薬を服用していれば大体安定していることも多いので、薬処方のための診察だけで終わることも多いのですが、今回はみぞおち付近の違和感が続いていることもあり久しぶりに胃カメラ検査を受けることに…(;´Д`)[たらーっ(汗)]
(…久しぶりと言っても前回受けたのは一昨年の12月なので1年2ヶ月ぶりくらい)

胃カメラ…受ける前のストレスで胃潰瘍になりそうです[たらーっ(汗)]
何度も飲んでいるけれど、どうしてもあれだけは慣れない[たらーっ(汗)][たらーっ(汗)] そもそも飲む度ごとにキツさが上がっている胃カメラというのもどうよ、って感じですが(;´Д`)(←妹が胃カメラ飲んだ時の病院は軽い麻酔をかけてくれるそうで楽だったとのことですが、私の行きつけの病院は胃カメラごときでは鎮静剤等は打ってくれません)



一昨日(2/1)は仕事帰りに森アーツセンターギャラリーで開催中の「新・北斎展」を見に行ってきました。
北斎展1.JPG
17時15分頃到着。まだほんのり明るいです。
冬至から1ヶ月以上経っているので大分日も伸びてきましたね。

1/17から開始だったのですが、何か2月からスタートだと勘違いしていました。
北斎展2.JPG
(2月から開始だったのはサントリー美術館で開催の「河鍋暁斎展」でした。こっちは来週にでも見に行く予定)



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葛飾北斎絡みの特別展はあちこちで開催されているので、冨嶽三十六景や諸国瀧廻りの浮世絵など有名どころは今まで何度も見ているのですが、どの展覧会もそれ以外のちょっとした目玉作品(肉筆画とか)を繰り出してくるので、その目玉作品を見たさに何度も足を運ぶことが多い北斎展。
ここ数年だと一昨年の暮れに見て来た「北斎とジャポニズム展」とか、2014年の「ボストン美術館浮世絵名品展 北斎」とかでしょうか。
一昨年秋にあべのハルカス美術館で開催された「北斎展」は残念ながら見に行けずでしたが[たらーっ(汗)]

今回の特別展もそんな感じかなぁ。でもわざわざ「新」北斎展と付けているし、何か相当目新しいものが?( =①ω①=)[ぴかぴか(新しい)]
と、期待半分で出掛けて来た今回の北斎展でしたが、確かに今までにない切り口から攻めた北斎展となっておりました。


今回の特別展の監修者・永田生慈氏は北斎研究のために私財を投じて作品の収集も行い、収集した北斎作品2000件以上を2017年に一括して故郷の島根県に寄贈されたそうです。

残念ながら永田氏は昨年2月に亡くなられたのですが、寄贈した北斎作品群(以降「永田コレクション」)は今回の特別展以降は寄贈した島根県のみで展示するように意思を残されています。
つまり今回の特別展は東京で永田コレクションを見ることが出来る最初で最後の特別展ということになります。

永田コレクションは研究の為に収集したためか、人気のあるなし問わず北斎が手掛けた物やそれに関連した物であればとにかく集めまくったらしく、今まで見たことが無いような展示品(北斎が書いた書簡や、娘お栄が出した北斎の死亡通知など)や、絵師としての初期の頃の作品が多いのが特徴です。


そもそも「葛飾北斎」と言えば、幾ら美術に疎い人でもその名前くらいは知っているほど人口に膾炙していると思うし、LIFE誌が1999年に発表した「この1000年で最も重要な功績を残した世界の人物100人」で日本人として唯一選ばれたほど世界的にも有名な絵師でもありますが、実は画号に「葛飾北斎」を用いたのは僅か4~5年という短さ。

北斎は画業約70年間の間に30回もの画号変更を行っているのですが、今回の特別展ではこの画号の中で主だった6つの号「春朗」「宗理」「葛飾北斎」「戴斗」「為一」「画狂老人卍」の時代ごとに描かれた作品をそれぞれ紹介する、という展示になっています。
他の画家ではありがちな展示方法なのですが、北斎の場合は比較的有名な作品群は「葛飾北斎」名義以降のものが多いせいか「春朗」「宗理」期に手掛けた作品展示は案外少ないのですよね。


「勝川春朗」を用いていた頃の作品
北斎展9.jpg
まだまだぎこちなさが残る感じの初期作品。
「春朗」時代の作品は時々東京国立博物館の常設展で何度か見たことがありますが、北斎と言うよりは鈴木春信のようなのっぺりした美人画ですね(;´∀`)

この頃の北斎は勝川春章に師事しており、春章の「春」と別号「旭朗井(きょくろうせい)」から一文字ずつ貰い「春朗」と名乗る程期待された弟子だったようですが、16年後に勝川派を破門になっています。
破門された理由は隠れて狩野派に習ったことが勝川派の怒りを買ったとも、兄弟子の勝川春好に絵の下手さを嘲笑されて作品を破かれたからとも。
(ただ後年になって北斎は「兄弟子に莫迦にされたから一念発起し、今の自分があるので」と語っていたそうで、結果オーライだったと言うことなんでしょうね)


その後、一時的に「叢(くさむら)春朗」名義を使用していたりしましたが、勝川派を破門された翌年からは「宗理」の画号を使い始めます。
「宗理」画号を使っていたのは知っていたのですが、春朗→宗理と全く異なる画号は何処から??と謎に思っていました。この頃の北斎は琳派を学んでいたとかで、俵屋宗理の二代目を踏襲して「宗理」と名乗っていたとのこと。

えぇーーっ、北斎って琳派も学んでいたんだ[exclamation]Σ(・ω・/)/
しかも琳派で有名なあの俵屋宗達の一門…??
(と思っていたら、初代宗理は俵屋宗達を敬愛するあまり、勝手にリスペクトして「俵屋宗理」を名乗っていたらしいので、厳密には俵屋一門ではないようですが)


もっともこの「二代目宗理」を名乗っていたのも3~4年ほどだったので、宗理画号時代の作品は非常に少なく、この宗理期作品を紹介しているチャプターでも「宗理時代に培い、後に『宗理美人』と呼ばれる形式で描かれた美人画」として画号が「北斎」「画狂老人」と後世に描かれた作品展示が多めだったのですが、「宗理」時代には描かれた貴重な初出展作品として「津和野藩伝来摺物」の展示がありました。
北斎展11.jpg
摺物(すりもの)とは一般向けに販売された浮世絵とは違い、私的に配ることを目的として摺られた版画です(企業とかが配るカレンダーとかそんな感じでしょうか)
配布数も限られていたことから浮世絵と比べると残存するものは極めて少ない摺物。
しかも今回出品の摺物は何れも保存状態良好なものが多く、目玉展示作品の1つです。

その他にも北斎作品では珍しい大首絵の展示もありました。
「風流無くてなゝくせ」ほおずき
北斎展12.jpg
この時の画号は「宗理」ではなく、その後の時代に名乗った「可侯(かこう)」となっています。大首絵作品は2点ありましたが、どちらも期間展示1月30日(水)~ 2月18日 (月)と公開短め。特に「ほおずき」はアメリカの個人蔵なので実物を見たい方はお早めに(*´ω`*)


その後、琳派系譜からも脱した北斎は「北斎辰政(ときまさ)」の画号を名乗る様になり、誰にも師事されず自分なりのスタイルを貫いていくことに。
この「北斎辰政」とは北極星(北斗七星)を表す言葉であり、ある日北斎が妙見菩薩を祀った寺院に詣でた帰り、突如として雷鳴が轟き、驚いて田んぼに転げ落ちて以降、急に作品が売れる様になった。これはきっと妙見菩薩様のお導きに違いない、と思い、それ以降誰かに師事せずに自然を師とすることを決め「北斎辰政」と画号を変えたのだとか。

円窓の美人図
北斎展13.jpg
シンシナティ美術館での調査で発見された北斎肉筆の美人図。
浮世絵が有名な北斎ですが結構肉筆画も多く手掛けています。
ただ近代になって海外に流出してしまった作品も多く、以前から収蔵していた作品が近年新たに北斎作品と認められることも。

北斎期に描かれた組上絵「しん板くミあけとうろふゆやしんミセのづ」は組み立てて完成させるおもちゃ絵の一種。
北斎展3.JPG
殆どが組み立てられてしまうため、組み上げ前の状態で残っているものは少ないのだそうです。
組み上げ前の摺り物は展示期間:1月17日(木)~2月18日(月)と前期のみの出品ですが、組み上げた後の拡大版湯屋は会場内唯一の撮影スポットになっていました。
北斎展4.JPG
北斎展5.JPG
おもちゃ絵ではありますが、組み立てるのはそれなりの技量が無いと結構難しいんだとか。
しかし良く出来ていますよねー(*´ω`*) 江戸時代の湯屋の雰囲気ってこんなだったんだ、と浮世的価値も垣間見える逸品です。


関東大震災で焼失した葛飾北斎の幻の巨大絵「須佐之男命厄神退治之図(すさのおのみことやくじんたいじのず)」の復元作品投影コーナーなんかもありました。
北斎展8.jpg
墨田区向島にある牛嶋神社に奉納された大作だったそうなのですが、関東大震災で焼失したため現存せず。
美術雑誌「國華」240号(明治43(1910)年刊)に白黒版のコロタイプ印刷が残されているのが唯一残る画像資料だったのですが、これを凸版印刷が最先端のデジタル技術を用いて復元
(復元の様子はNHK特集で2016年に放送されていたそうなのですが、見損ねたーー(>_<)[あせあせ(飛び散る汗)])


特別展ではプロジェクターによる投影だけでしたが、復元された「須佐之男命厄神退治之図(すさのおのみことやくじんたいじのず)」はすみだ北斎美術館に常設展示されているそうです。
そう言えば未だにすみだ北斎美術館に足を運んでいないや(>_<) 今年こそは見に行こうと思います。


冨嶽三十六景や諸国瀧廻りの浮世絵作品もやはりありましたが、こちらは永田コレクションではなく、別のコレクター寄贈(新庄コレクション)によるものでした。
状態は良いものだったのですが、残念なことに額装用として端部分を全て切り落としてしまっているものばかり[たらーっ(汗)]
摺り時期の特定にもなる版元や名主印がほぼ切られているのが残念…(;´Д`)



そして会場の一番最後に見るのを楽しみにしていた作品3点が。

「雨中の虎図」と「雲龍図」
北斎展7.jpg
「雨中の虎図」は太田記念美術館が所蔵する作品ですが、21世紀に入ってからフランスのギメ東洋美術館に寄贈された「雲龍図」がこの「雨中の虎図」の表具と同じであり、一対として描かれた作品であることが判ったもの。

国内で何度か龍虎セットで展示されたことがあったようなのですが、私は今回見るの初。
90歳近くになってもなおこれだけの作品を描ける気迫の様なものを感じる作品でした。

そしてもう1点「弘法大師修法図
北斎展10.jpg
悪鬼を調伏する弘法大師、弘法大師の後ろで怯えながらも吠えたてる犬を描いた150×240cmの一枚梳の巨大な和紙(※)に描かれた作品。
無落款であったためか明治期の刊行書に掲載された後、長年作者不詳として西新井大師に保管されていたそうですが、永田生慈氏の研究により1980年代になってようやく北斎晩年の肉筆作品であることが判明したのだそうです。
(※)その後の保存修復で36枚の美濃紙の断片から成り、軸装ではなく扁額として奉納された可能性が高いと指摘されている。

この肉筆画は普段は展示されておらず、10月第一土曜日に開かれる北斎絵の時だけ本堂に飾られるとのこと。
今回の特別展では開催期間中通期展示となっていますので、普段は見られない貴重な肉筆画を間近で見られるチャンスなのです。


六本木は地味に遠いので1時間程早めに仕事切り上げて出掛けたのですが、オーディオガイド借りてじっくり見ていたら閉館間際までかかってしまいました。
(オーディオガイドも非常に面白かったので、見に行くのであれば借りることをオススメします)
何しろ出品数が多い[exclamation×2]  期間中は何作品か入れ替えがありますが、全部で480点もの作品が展示されます。
後期は2/21(木)からスタート。いつもは大抵どちらかの開催期間にしか行かないことが多い展覧会ですが、今回ばかりは後期も見に行こうかと画策中です。
土日は既に入場までに60分待ちなど大盛況な様子なので、後期もまた金曜夜間かな。

見終わった後の夜景ビューを見るのも楽しみですし(*´ω`*)
北斎展6.JPG




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☆ミルキーウェイ☆

胃カメラ、なかなか辛いですよね^^;
私は、検診の時でさえゲップを我慢できなくてバリウム2回飲まされたりします^^;
葛飾北斎、ずっとその画号だと思っていたら30回も画号変更を行っていたのですね^^;
北斎の画号が有名なだけに、他作品を見失ってしまいそうですが…^^;
「雨中の虎図」は、とても迫力がありますね。
本当に、90歳近くになって描かれた作品とは驚きです。
by ☆ミルキーウェイ☆ (2019-02-05 02:25) 

そらそら

母は胃カメラの方がバリウムよりも楽と言うのですが、私は嚥下反応強いのでどうにも胃カメラ苦手です(>_<)
最近のはだいぶケーブルもだいぶ細くなっているのですが、細かろうが辛いものは辛い…;

「葛飾北斎」の画号で描かれている作品ってそれほど多くないのですよね。
今回の展示でも「北斎宗理」「画狂人北斎」「北斎」「北斎為一」などが多かったです。
68歳の時、中風(脳溢血)で筆を持つのも難しくなった時期があったそうなのですが、柚子を煮詰めて作った自己流の薬で治してしまい、その後は天寿を全うするまで絵を描き続けたと言うのですから、正に画狂人Σ(・ω・/)/
亡くなる前は「天我[てんわれ]をして五年の命を保たしめば、真正の画工となるを得べし」<せめて後10年、いや5年長生き出来れば本当の絵描きになれたのに>と嘆いたと言われていますが、ホントに後5年長生きしていたら、もっと物凄い作品が残せていたのでしょうね。

by そらそら (2019-02-05 23:50) 

middrinn

3年前だったか入院中に胃カメラもやらされましたが、
麻酔のお蔭か気付いたら終わっておりました(^_^;)
行く予定なのでいつも以上に興味深く拝見拝読(^^)
現存唯一の春朗落款の肉筆画は28日までだったそうで
入れ替えも多そう(-ω-、) 岩切友里子もキュレーター
と聞きましたし、珍しく図録も買うつもりです(^_^;)
by middrinn (2019-02-07 19:43) 

そらそら

数年前、検査入院でバルーン内視鏡検査を受けた時は同じく麻酔下で受けました。
が、XX年前に手術した際、検査のため受けた内視鏡ではしっかり意識がある状態で受けさせられました(;´Д`) 今でも忘れられないあの目前のケーブルに記載された「1m15cm」の文字。「あぁ、今115cmも内視鏡が入っているんか;」と絶望し、受け終わった後ですっかりグロッキー状態だった内科での内視鏡;(その後、外科に転院してまた内視鏡やらされましたが、外科ではそれほど苦行ではありませんでした) 胃カメラを受ける時は「内科のあん時よりはずっとマシ!」と思いながら受けています(;´Д`)

北斎展、行かれるならオーディオガイドも是非!
後期も行こうと画策していますが、六本木は地味に遠いのが難点なのですよね;上野なら近いんだけどなぁ。

by そらそら (2019-02-07 22:29) 

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